資金繰り表とキャッシュ・フロー計算書の違い

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[1]呼び方が違うだけでしょう?

 

資金繰り表とキャッシュ・フロー計算書はともに現金預金などの増減のことを言っているようですが、何がちがうのでしょう。

 

統計のことを“センサス”と呼んで、古く固い印象から、新鮮で親しみやすく統計調査を促すような感じ。

 

借金をキャッシングと呼んで抵抗感なくお金が借りられそうな感じ。

 

同じようにキャッシュ・フローという呼び方は「お金の出しいれ=資金繰り表」をただ英語でカッコよく呼んでいるだけのような気もします。

 

どう違うのかピックアップしてみました。

 

[2]4つの違いがあった。

①作成義務があるかないか、の違い

 

キャッシュ・フロー計算書は上場企業では2000年3月期決算から作成が義務づけられている財務諸表(損益計算書、貸借対照表などと並ぶもの)のひとつである。

資金繰り表にはそのような作成義務はない

 

②ルーツの違い

 

資金繰り表は商売を続ける上で、企業内部で自然発生的に必要となってくる資料であり、経営者、経理担当者のメモ書きから始まり、それぞれ独自の作成基準、フォーマットが形づくられたところからの記録の総称である。

キャッシュ・フロー計算書は欧米から発生し、国際ビジネス時代に必然的要請となった国際会計基準の統一化からのものである。

またバブル経済崩壊を経験し、金融機関においても、それまでの担保第一主義から企業の支払能力の検証を重視すべく、キャッシュ・フロー計算書の有用性を支持すべきものとなった。

 

③どこにスポットを当てるのかの違い

 

資金繰り表は、将来お金が足りるか、月末に資金ショートしないか、銀行からいくら借入しないと間に合わないか。

資金に余裕があるなら、設備投資、事業拡大に資金を回せるか、という将来のためのものである

 

キャッシュ・フロー計算書は、過去の記録であり、どのようなことで現金預金の増減があったか(本来の営業活動、設備投資、借入、借入返済、税金支払いなど)を事細かく分析するためのものである。

 

④誰に見せるのか、の違い

 

キャッシュ・フロー計算書は、主に株主、投資家など外部関係者に報告するためのものである。

資金繰り表は、基本的に企業の内部資料である。

 

[3]実は、お互い協力関係にあった

 

事業をしていくうえで、資金繰り表は重要です。なぜなら資金を残すことが事業では必要不可欠だからです。

儲かってなければ、今週末、今月末、来月末、再来月末、資金ショートすることなく、お金があるかどうか。

仮に、順調に売上が伸びていても、それにつれて仕入、経費も膨らみ、また新たな設備投資のため支払も大きくなる一方、売上債権の資金化が思ったより遅くて、資金ショートすることもあります。

 

資金繰り表は、予測(予定)→実績→その差の分析→予測(予定)→実績→その差の分析の繰り返しで、より精度の高いものにしていくことによってその作成の効果が上がります。

この時の実績と分析がキャッシュ・フロー計算書作成のテーマでもあり、分析により精度の高い将来の予測(予定)資金繰り表が作成されます。

 

両者、お互いに助け合って資金の情報を作って、経営を支えていこうよ、といったところでしょうか。

 

 

 

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