経営者からしてみれば、人件費をなるべく低く抑えて、利益を大きく上げたいと考えます。すなわち従業員には、給料面ではあまり期待に応えられないが、効率よく喜んで働いてもらいたい。
従業員から見れば会社が潰れるのは困るが、自分の給料、賞与はなるべく多くしていただき、毎年アップしていただきたい、また将来の退職金もたくさんご用意お願いしたい。会社が儲かっていないとすれば、自分たち従業員に問題があるのではなく、経営者の抱えるその他諸々の采配に問題があるのではないか。
ともするとこのように両極端になってしまい勝ちな立場について、端的に経済指標にしたのが、労働生産性と労働分配率です。
[1]労働生産性
どれだけ能率的に労働力を使えたのか? → 労働生産性
労働生産性とは、従業員一人当たりの付加価値を示した指標です。
労働生産性=付加価値額/従業員数
(付加価値については、別ログにあります)
[2]労働分配率
経済活動の成果の内、どれくらいの割合を人件費に使ったのか? → 労働分配率
労働分配率とは、企業が生み出した付加価値の内、どれだけ人件費に分配したかを示した指標です。
労働分配率=(人件費/付加価値額)×100
*人件費には法定福利費(社会保険料会社負担分)、福利厚生費(社員旅行費用等)、退職金なども含みます。
[3]ふたつの関係
労働生産性が高いという事は、効率よく人を使っているといえますが、同時に労働分配率が低ければ、その効率的に生み出された付加価値の一部が相応に従業員に分け与えられていない、ということになり、ひいては従業員の勤労意欲が鈍り不満がたまります。
逆に、生み出された付加価値が従業員に十分に分け与えられ、労働分配率も高い水準を維持し続ければ、従業員に満足感があるが、その分会社全体の利益を縮小してしまうこととなります。会社に利益が残らなければ、会社の存続自体が将来危うくなる可能性があり、結局従業員もそれは望んでいません。
経営者としては、公表の同業種の統計や自社過年度の、この二つの指標を比較検討しつつ、妥当なところを模索し続けていくのが理想でしょう。
*どちらにも偏ることなく、中庸のボーダーライン上を目指す、といったところでしょうか。