もめて申告期限まで遺産の分け方が決まらないとき(未分割の場合の相続税の申告)

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相続人の間で遺産の分け方の話し合いがつかず、相続税の申告期限がきてしまったとき、相続税についてどうなるのか?

申告期限までに遺産を分割しなければならない、という決まりはありませんが、こと相続税法については、不利又は手間がかかることになります。

遺産を誰が何を取得する、という分割が決まっていない状態であっても、相続税についてはその期限までに申告と納税をしなければなりません。

[1]未分割がある場合の期限内申告

未分割であった遺産については、民法に規定する法定相続分の割合により各相続人がそれぞれ財産を取得したものとして相続税の期限内申告をしなければなりません。

借金など債務があった場合には、これも法定相続分により各相続人が承継したものとします。

[2]その後分割があった場合

その後、相続人間の話し合いがつき、遺産の分け方が決まった時には、それに基づいて、申告をし直すことができます。

申告し直さなければならないのではなく、し直すことができます、となっています。

というのも、期限内申告の時の相続税の総額と比べて、申告のやりなおしにより、個々に増減はでるものの、全員の納税額総額が増えることはないため、課税庁側で強制すべきことではないため、義務ではなく任意となっています。

税金が当初の申告額より増えるときは、修正申告(正しく直した分の税金を納めます、という申告書)。

税額が当初の申告額より減る見込みのときは、更正の請求(正しく直して税金を減らしてください、という願書)です。

[3]未分割の場合の申告で重要なこと

遺産の全部又は一部が未分割で期限内申告をすると、その未分割である財産の部分に関しては、以下の規定などは使えませんので、とりあえず不利になります。

・小規模宅地等についての課税価格の計算の特例

(個人の生活に重要な住居又は事業承継に関する優遇規定であり、取得者が決まらなければ、この規定の趣旨にそぐわないため)

・配偶者についての税額軽減

(配偶者が取得すると決まらなければ、この規定の趣旨にそぐわないため)

・農地等の納税猶予、山林の納税猶予、非上場株式の納税猶予

(事業承継に関する優遇規定であり、取得者が決まらなければ、この規定の趣旨にそぐわないため)

 

特に小規模宅地等についての課税価格の計算の特例、配偶者の税額軽減については、適用のあるなしで大きく税額が増減します

・しかし納税猶予を除くこれらの規定は、申告期限後3年以内に分割を行えば、これらの適用を受けることが可能です。相続税の当初申告書に、申告期限後3年以内の分割見込書を添付し、分割が確定後4月以内に更正の請求をした場合には適用を受けることができます。

・さらに相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日において、やむを得ない事情があるため、まだ分割が決まらない場合において、その翌日から2月を経過する日までに遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の申告書を所轄税務署長に提出し、承認を受けた場合には、期限を延長して、上記の規定について適用を受けることができます。

[4]相続財産に賃貸用不動産がある場合

相続財産に賃貸用不動産がある場合、その賃貸収入については、分割があるまでは共有財産となりますので、家賃収入などがある場合には、法定相続分によりそれぞれの相続人の所得となります。その後分割があった場合、分割以前のこれらの収入などについての帰属は、分割があったことにより相続開始時までさかのぼって、変わりません。課税庁も含めて周りの人達も混乱してしまうというのが理由のひとつです。

 

[5]相続財産を売る予定の場合

相続税の申告期限の翌日から3年以内に相続財産(山林を除く)を売った場合、所得税では、相続税額の取得費加算という、少し所得税が少なくなる規定があります。期間を過ぎてしまったら、適用がないことになります。

 

*遺産分割をしないと、遺産はいつまでも相続人全員の共有のままであり、またその相続人たちが亡くなったりしたら権利関係がますます複雑になります。

仲良くうまく早くやる、に越したことはないようです。

 

 

 

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