個人事業主の場合には、従業員の人数が2、3名ならば健康保険と厚生年金には加入しなくていいのに、なぜ労災(労働者災害補償)保険と雇用保険には加入しなければならないか?
個人で商売を初めて、ちっと手が足りなくなり、一人でも人を雇ったら、すこし面倒な手続が必要になります。
労災保険と雇用保険、2つひっくるめて労働保険です。
どうせなら、健康保険と厚生年金と足並みそろえて労働者が常時5人以上になったら労働保険も一緒に加入するようにしたら、と思いますが、どうやらそれぞれの性質上そうもいかないようです。
労災保険
労働基準法では、雇っている人が仕事中にケガや仕事の影響で病気になった時に、雇用主である事業主は、その療養費を負担しなければならない。
労働できずに賃金が支払われない場合には、その平均賃金の60%を、死亡した場合には1,000日分の遺族補償を行わなければならない。お葬式などを行う場合には平均賃金の60日分の葬祭料を支払わなければならない。
などと決められています。
人を雇うという事は、こちらの指示に従って忠実に働いてもらう代わりに、万一の時にはこのように補償しなければならないという責任が生じます。
そこで、事業主の負担を和らげるために国が肩代わりをしようとする制度が、労働者災害補償保険です。
事業主の代理のための保障システムなので、保険料は全額事業主負担です。
雇用保険
雇用保険は、失業した時、失業前の給与額の一定水準までを保障して労働者の生活の安定を図ること。高齢者の定年後の雇用促進及び育児休業・介護休業の取得や休業終了後の社会復帰を援助促進するなど労働者の雇用の安定を図ることを目的に給付を行います。
雇われた人がその給料などをあてにして安定して生活設計を立てたところ(週20時間以上労働かつ31日以上継続雇用される見込みの人などが対象)
で、会社都合又は自己都合で失業した場合、育児介護などで休業した場合などに大いに助かるものですので、事業者も雇われている人もどちらにも責任がありうることなので、保険料はどちらも一定割合で負担します。(従業員からは毎月の給料から天引き)
*公的な制度で、健康保険と厚生年金は、一応国民健康保険と国民年金という代わりのものがありますが、労災保険と雇用保険の代わりはありません。「全体の従業員の人数が少ないからまだうちは労災保険と雇用保険入りませんよ」といっても、従業員たったひとりでも何かあったらお互いに困り大問題に発展することもあると思います。
結局労災保険と雇用保険どちらも、保険なので万一のことがなければ、払ってばかりで目に見えて恩恵はないなあ、と感じると思いますが、その分平穏であるということで納得しましょう。