家なき子の特例。家なき兄さんでは?(小規模宅地等の特例)

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相続税を安くする規定に被相続人が住んでいた居住用宅地についての特例があります。

この規定には、次の様な特徴があります。

[1]土地の評価を80%割引に出来るサービス規定(面積の制限はあり)である。

相続税の計算は、相続財産の評価額に比例するので、財産の評価が高ければ相続税も高くなり、低ければ相続税も安くなる。

[2]家屋の規定でなく、土地の規定である。

家屋の評価ではなく、土地の評価の特例である。

しかしその土地の利用状況はその上に立っているか家屋などの利用状況が端的に反映されるので、家屋の使い方と密接に関連している。

[3]その土地を取得した個人の居住状況がポイントとなり、被相続人の所有であった宅地に依存的である親族の居住環境に配慮する趣旨がある。

平たくいえば他の場所に住むところがある、又は住むところに困っていないのであれば、優遇するに及ばないであろう、という考え方からと思われます。

[4]相続税の申告がないと受けられない規定である。

この規定は自動的に適用されることはありません。納税者が申告において自発的に適用を受ける旨の所定の手続が必要です。

例え納税額がゼロとなる場合であっても、様式に従った相続税の申告がないと受けられません。

[5]取得のケース別に、条件がいくつかあること

・被相続人の配偶者がその宅地を取得する場合には、条件は不要です。

奥さんや夫に先立たれたその配偶者である夫や奥さんについては、当然に納税負担を軽減すべきであるという考え方からです。

・被相続人と同居していた親族が取得する場合は、少なくとも相続税の申告期限まで保有して、継続して住み続けていることなどが必要条件です。

同居しているか、同一生計親族がこの規定を受けられるのは割とスンナリうなずけます。

ところが、一緒に住んでもいないし、同一生計でもない親族にもこの規定が受けられるチャンスがあります。

俗に“家なき子の特例”と呼ばれることがあります。

家なき子の特例の条件とは(2019年4月以後)

その土地を取得した親族は国内に住所があること、又は日本国籍を有していること。

被相続人に配偶者がいない事。

被相続人が住んでいた家屋にほかに法定相続人がいない事。

その相続(=被相続人の死亡)の開始前の過去3年間にその土地を取得した親族又はその親族の配偶者、取得者の三親等内の親族、取得者と特別な関係にある法人(出資割合50%を超えるなど)の所有する家屋に居住したことがないこと

相続開始時にその土地を取得した親族が居住している家屋を過去に所有していたことがないこと。

その宅地等を相続開始時から申告期限まで継続して保有していること。

土地の評価が80%引きになるという大きな優遇規定となりますので、特に④、⑤の規定で、居住環境に余裕があると予想される場合や税負担を逃れようとする場合(個人名義の住居を、自分が経営主体となっている法人に家屋の名義だけ変えるなど)をけん制しています。

亡くなった親と一緒に住んでいなかったが、持ち家のない子供がこの優遇規定をうけられる、というのが、この“家なき子の特例”。

しかし上記の条件にあるように、子に限ったものでなく、亡くなった人の親や兄弟姉妹である親族にも適用されますので“家なき子”と簡単に位置づけられません。

いわば家なき兄さん、家なき姉さん、家なき父さん、家なき母さんでもこの規定を受けられます。

家なき子というと経済的に余裕がないような印象もありますが、経済的に余裕があっても仕事上の都合、又は余裕があるからこそ持ち家を持たず、賃貸住宅に住んでおられる方も多いですよね。

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