民法では、特別な場合を除き遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言及び秘密証書遺言の3種類の方式があります。
そのうち、一番利用が少なく、人気がないのが秘密証書遺言です。秘密証書遺言は、いわば公正証書遺言と自筆証書遺言の中間的な位置づけであり、他の2つの遺言と比べ、独特な使い勝手となります。
[1]秘密証書遺言の特徴
秘密証書遺言は、署名は自分でする必要がありますが、自筆証書遺言と違い、全文自分手書きする必要がなく、代筆やパソコンで記載してもOKです。
自筆証書遺言は記載した文書を封筒に入れる入れないは自由ですが、秘密証書遺言は必ず封筒に入れ、証書に押した印鑑と同じ印鑑で、封印します。
秘密証書遺言は、公正証書遺言と同じく、公証人の確認と同時に証人が2名必要です。
公正証書遺言の内容は、公証人はもちろん、証人2名にも明らかにされますが、秘密証書遺言の内容は、公証人及び証人に一切明らかにされず、封書の中身を自分の意志で作成したことを申述し、遺言の存在だけの証明書を作成してもらいます。
公正証書作成手数料について公正証書遺言は、遺言に記載された財産の金額に比例して、かかりますが、秘密証書遺言は、定額で現在11,000円のみとなります。
公正証書遺言は不要ですが、秘密証書遺言と自筆証書遺言は、相続開始後に遅滞なく、封印があれば開封せず、家庭裁判所において検認の手続をしなければなりません。(検認を怠ると5万円以下の罰金となります。)
秘密証書遺言は、公正証書遺言と違い、保管は自己管理で、公証役場に内容の控えがあるわけでもないので、紛失する可能性、相続開始後、封書が発見されない可能性もあります。
[2]秘密証書遺言を選択する場合
公正証書遺言は厳格ではあるが確実、自筆証書遺言は管理および効果に不安はあるが手軽に無料で作成できる、という特徴があり、遺言を考える人はこのどちらかの方法をほとんどの人が選びます。
ではなぜ秘密証書遺言の方法があるのか?ですが、以下の理由が考えられます。
①死ぬまで秘密にしておきたい事情があるとき
単純に内容を誰にも知られたくないとき、又は愛人、隠し子、恩人などに財産を分けたいという意思があり、遺言の存在は確実にしたいが、自身がなくなるまでは、その内容を誰にも知られたくないときに利用のメリットがあります。
②公正証書ほど手間とお金をかけたくないとき
公正証書遺言としたいが、公証人との内容の検証などの手間と、お金をかけずに遺言をしたい、又はすでに作成した公正証書の追加として手早く作成したいときに利用します。
③自筆証書遺言よりは確かなものにしたいとき
全文自筆で記載すれば自筆証書遺言の要件も兼ねますので、自筆証書遺言より遺言の存在が確かなものとなります。
*とにかく秘密第一主義なので、財産と関係なくてガッカリする相続人その他の人もいるかもしれませんが、身内の人、けんかして疎遠になっている方への、生前、口に出せなかった謝罪や感謝の言葉などがつらつらと書いてあったら、それも使い方として悪くはないかもしれませんね。