認知症の人が書いた遺言は、すべてのケースで無効とはならない。
認知症の人が自分で書いた遺言が有効になるか、無効になるかですが、
次の自筆証書遺言の要件をクリアしていれば、初めの段階としては問題ありません。
・全文自筆であること(ワープロ、パソコンの文字でない)
・年月日の記載が有ること(日にちが特定できる事。11月吉日、ではダメ)
・氏名が自筆で記載が有り、押印があること。(この押印は実印が望ましいですが、実印でなくとも、認印でも拇印でもOK)
筆跡ですが、認知症でなくとも、か弱くたよりない字や荒々しく乱暴に見える字を書く方はいらっしゃいますので、本人のものと推定でき、かつ大きな誤解を招くことなく判読できれば大丈夫です。
次に内容ですが、遺産とその取得者が特定できれば、遺言者の真意が読み取れないような意味不明な場合や、遺産とその取得者の特定に矛盾する記載がなければとりあえずクリアです。
認知症とひとことで言っても、物事を認識し、判断したりする能力、程度はそれぞれであり、また、同じ人でもタイミングによって、全く正常な時と異常な時があり、生前、医師に認知症とされていたとしても、それをもって断定的に遺言能力がなく、遺言が無効となることはありません。
認知症の人が書いた遺言書が無効となるかは、裁判所の判断
遺言の内容を見た相続人又は遺言により指名された者が、その内容に納得がいかない場合、遺言した事項について正常な判断能力を備えていたのか否かについて、その納得いかない人が、家庭裁判所に調停を求め、さらには地方裁判所に遺言無効確認訴訟をおこします。
その裁判において、次の判断材料を踏まえて、裁判をすることになります。
- 医師の診察、診断内容、脳の画像検査、記憶力検査記録、証言。介護者や介護業者の記録や証言など。
- 遺言書記載当時の家族、同居人、相続人などの関与状況(主に、自己に有利になるような遺言を巧妙に書かせるなど)
認知症となってからの自筆証書遺言は、トラブルになりやすいので、できるだけ、公正証書遺言とした方が100%ではありませんが無効になりにくいと思います。
出来れば認知症になる前に公正証書遺言としたいところです。
*最も、相続人となる側からしたら、本人がしっかりしている間は、中々こちらから遺言を書いてほしい、と言い出しにくい場合も多いと思いますが。認知症が進んでからでは、やはり、時すでに遅し!と思った方がよいようです。