法人成りにより事業用資産を法人へ移転する場合の課税

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法人成りにより事業用資産を法人へ移転する場合の課税について確認してみました。

 

個人事業主からひとりで株式会社を立ち上げる方も多いと思いますが、ひとたび法人となれば、個人事業の場合の個人のものと、法人のものとはキッチリ区分しなければなりません。

例えば個人事業の用の供していた事業用資産である建物を、法人成りにより法人の事業に供する場合には次の5つの方法があり、いずれかの処理が必要です。

個人が法人に建物を、

売る(譲渡)

あげる(贈与)

有料で貸す

無料で貸す

現物出資する(お金の代わりに会社の元手にする)

 

 

①売る(譲渡)については、一番シンプルでわかりやすいと思います。

税法上、取引価格は時価となります。

事業用建物であれば、時価を帳簿価額と同一とみなすことがほぼ出来るので、帳簿価額で売買すれば、時価-帳簿価額=ゼロとなり所得税はかかりません。

また個人が消費税の課税事業者であれば、消費税が課されます。この時新設法人の方は、消費税の課税事業者でなければ、課税仕入れができない(不利になる)ので、事前に十分な考慮が必要です。

 

②あげる(贈与)については、無償であっても時価で取引したものとみなされ、所得税の対象となります。時価を帳簿価額とできれば、上記と同じく所得税はかかりませんが、法人の方は無料でもらったので受贈益が生じます。

また個人が消費税の課税事業者であれば、個人事業を廃業した時点で、建物について消費したものとして、消費税が課されます。

 

③有料で貸す場合は、個人と法人で賃貸借契約書を作成し、相場を参考にした適正な賃貸料を設定する必要があります。

個人が消費税の課税事業者であれば賃貸収入について消費税が課されます。

 

④無料で貸す場合は、使用貸借契約書を結び、維持費などを法人で負担とすれば問題ない場合もあります。

消費税は無償取引なので課されません。

 

⑤現物出資する場合

現物出資は、一見、建物を出資とするのだから、課税関係はないと思えます。

しかし税法上は、一旦法人に現金で出資し、法人が建物をその現金で買った、という形となり、所得税の対象になります。また個人が消費税の課税事業者であれば、現物出資については消費税が課されます。

現物出資の金額が500万円超であると検査が必要となること、資本金の金額が現物出資の金額に左右されること、株式会社を設立するための最低資本金が、1円でも可能となったため、特別に現物出資を選択するメリットは少ないと思います。

 

*結局、契約書を作成し、売る又は有料で貸す、がやり易い方法です。

売買したいが、お金が当初ない場合は、分割で支払うように予め契約書をキッチリ作成しておけばOKです。

 

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