従業員を雇って給料を支払っている事業者は、支払った給料や報酬から天引きした源泉所得税を原則月一回、場合によっては半年に一回は、金融機関など経由で国に納付しなければならない。
その納付の際の報告明細及び領収書となる、給与所得等の源泉所得税納付書(所得税徴収高計算書)の気になる点について挙げてみた。

[1] 複写式となっている控えの印字が薄くて見えない
従来の紙ベースでは、複写式となっている全3枚のうち、1枚目の提出用の厚い紙面に、自分で文字や数字をボールペンで記載して、金融機関などへ納付の際に提出する。
納付して一息ついた後、提出者へ返される3枚目の領収書となるペラペラの薄い紙面を見ると、なんと、記入時の筆圧が普通の人モード以下であると、複写システムが十分でなく、文字や数字を判読できない。いくら払ったのか、いつの分を払ったのか、その他詳細の数字がわからない。
普通の人が普通に書いて、はっきり3枚目の控えまで複写可能にするには、複写用紙作成によほどの予算がいるのかもしれない。 税務署に行けば、無料でもらえる用紙であるので、あまり強いことは言えない。
もっともデジタル申告及び納付時代の波に逆らうようで、いまさらその声すらかき消されそう。
彫刻のレジェンド棟方志功のような情熱的かつ繊細な芸術家になった気分で、全集中。力の限りの筆圧で、かつ字体が崩れないように慎重に書けば、何とか控えまでハッキリ写る仕様となっている。
[2]年末調整による超過税額の数字記入欄の頭に▲がついているので、超過のマイナス=不足と誤解する。
“年末調整による不足額” という欄と、その下に“年末調整による超過税額” という欄が設けられている。
上部の各行で税額を記入したあと、年末調整で追加で納める税額が計算された場合、年末調整による不足額の欄に、追加の税額を記入することは容易に理解できる。
迷うのは、その下の年末調整による超過税額の欄で、超過税額とは、年末調整実施時点で、事業者が従業員の給料などから税金を本来より多く天引きして計算や納付してしまった分を、これから納付する税額から差し引くという意味合いだ。
年末調整による超過税額を書くのだから、もし10,000円天引きし過ぎたら、10,000円と数字枠に書くだけなのだが、誠実で素直な人は、その数式の前に▲があらかじめ印字されているので、超過税額のマイナスは、超過の反対となり、10,000円不足(=納付)になるのではないか、という誤解を招く。
この表現の仕方は、納税者への他の通知にもあり、例えば以下の表現だと、還付される税金の欄の、数字の前に△があるため還付のマイナスなので、納付になるという解釈となる。
実際は還付の場合の記載であり、深く考えなければ違和感も持たないのだが、記載のままに誠実に読み取ろうとすると、その還付のマイナスは、納付という解釈のほうが正しく思える。
私も初めてこの表現を見たときは、動揺したのだが、杓子定規に考えても仕方がない。そのような表現方法をとっている、と受け止めざるを得ない。
[3]延滞税の欄があるため、延滞したら自分で延滞税を計算するのか?
本税の下に延滞税の欄が設けられているため、納付期限を過ぎてしまった場合、この欄に自分で計算した延滞税を記入しなければならないのではないか、という迷いが生じる。
国税庁の所得税の令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引きにも次のような説明文がある。
“納付が納期限に遅れた場合、納期限の翌日から納付日までの延滞税がかかります。
このような場合は、金融機関又は所轄税務署の納税窓口で、本税と併せて延滞税を納付してください。”
本税といっしょに延滞税も支払わなければならないのであれば、一般の納税者にとって、その正確な計算のため日数がかかり、いつまでも延滞してしまう。
この延滞税を正確に計算するためには、その時々の利率や、税額計算の端数切捨て、実際に納付が完了した日なども考慮しながら計算する必要があり、手引きにも細かい字で説明があり、ネットで調べれば算式はわかっても、納税者が自分で計算するのは、直感的に、そぐわない。
延滞金とは、レンタルビデオの返却遅延による延滞金のように、レンタルビデオ店がお客さんから返却された事実を確認し、レンタルビデオ店が延滞金を計算し、それを延滞者が承認し、渋々支払うのが普通ではないのか。
電気料金の支払い遅滞や、銀行からの借金の返済遅滞でも同様、延滞者が自分で計算するものではないだろう。
なんのことはない、この延滞税については、本税の納付完了後、後日税務署が延滞税を計算して請求書がくるので、それに従うのが通例だ。
延滞税は、条文上、自動的に付加が決定される税なので、その建前に従った表現とし、納税者が記入できる欄を設けているようだ。
[4]左上の年度欄記入の意図が不明
左上に“令和 年度” とガイドの文字があり、そこに数字をかく欄がある。
自分がこの納付書で納付する月の、国の機関の会計年度4月から3月までの単位の年度を記入する。
たとえば令和8年3月に支払う場合、07と記入することになるのだが、これを記入させる意図がわからない。
納付書の裏に、「会計年度(毎年4月1日~翌年3月31日)を記載してください」、とだけ説明があるのだが、一体何の会計年度なのか、なぜ会計年度が4月から3月までと、今どき当たり前のように前提としているのか、納付する月を含む会計年度なのか、源泉税を天引きした月を含む会計年度なのか、不明。
「国の国税の機関の会計年度が、毎年4月から3月までとなっております。この納付書であなたが納付を完了する月を、国税の会計年度に当てはめて、該当する国税の会計年度(例えば、令和8年3月に納付する場合、令和7年度)を記載してください。」としっかり説明があれば理解できるのだが。
実際、令和8年3月に納付する場合、08と記入しても、空欄のままでも税務署などから指摘されることはない。
国税が実際に納付されたときの会計年度は、国税の機関がよく知っているし、国税の機関が確認して決定するのだから。
*源泉所得税についても電子申告及び電子納付が奨励され、普及も拡大しているようです。
金融機関や税務署の窓口で紙の用紙で現金納付するスタイルも減少してくるので、上記の不明点などは今後、問題にはならないと思いますが、慣れていないと、きまじめな納税者ほど気になってしまう点です。
