贈与契約は、あげる人ともらう人の、お互いの合意があって、成り立ちます。
一方、遺言による贈与(遺贈)は、あげる人のみの意向で遺言書が作成され、あげる人が亡くなったのちに、もらう人が初めて承認又は放棄します。
この中間的な位置づけに、死因贈与というものがあります。
[1]死因贈与とは
死因贈与とは、あげる人ともらう人の合意があって、はじめて成り立つ点は普通の贈与契約と同じです。
しかし、あげる人が、死んだら〇〇をあげますよ、という特殊な条件付きの贈与契約です。
[2]死因贈与のメリット
・あげる方ともらう方の両方の了承のもとに契約するため、遺言のように一方的に贈与することを死後になって表明することより、内容が明白で確実な約束となります。
・不動産などの死因贈与の場合、遺贈では無理だが、死因贈与では、法務局に所有権移転の仮登記ができます。
・上記の理由により、推定相続人が複数いる場合、相続争いを抑止できる可能性があります。
・死因贈与を利用する例として、次のような負担付き死因贈与があります。
“自分の老後の面倒を看てくれたら、死んだのち土地を譲ります”
“死んだ時、借金を肩代わりしてくれたら、土地を譲ります”
“私の死後も、家と庭をずっと維持してくれるのなら、死んだのち家と土地を譲 ります”
・普通の贈与では贈与税の対象となり、相続税より高額な贈与税が課されるが、死因贈与の場合は、遺贈と同じ扱いで相続税の対象となる。
[3]死因贈与のデメリット
・不動産を取得した場合、相続人への遺贈なら、不動産取得税はかからないが、死因贈与では相続人でも不動産取得税がかかる。
また登記の際の登録免許税も、相続人は遺贈の時より高くなる。
・遺言の場合、遺言者単独で、遺言の撤回、再作成をすることができるが、死因贈与の場合、受贈者と合意して作成したものを、撤回や再作成することは容易にできず、トラブルの原因となる可能性があります。
[4]注意点
死因贈与契約は、口頭の約束でも成り立つとされていますが、実際は公正証書とし、さらに死因贈与契約執行者を受贈者として契約しておかないと、不動産登記の際、相続人全員の協力が必要になり、すんなりいかない場合があります。