申告期限までに遺産分割がないと相続税は不利になる(遺産分割協議書)

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相続財産は、相続開始(人の死亡)と同時に相続人の共有財産となります。

その共有財産を相続人のあいだで具体的にどのように分けるかの話し合いが遺産分割協議であり、その結果を記載したものが遺産分割協議書です。

遺言書があっても、相続人全員の合意があれば、遺言書の内容にかかわらず遺産分割協議により、分け方を決めることができます。

 

被相続人の借金などの債務は、俗にマイナスの財産といわれ、相続財産に含まれますが、各相続人に法定相続分で承継されることが大前提です。

しかし、この債務についても遺産分割協議によって、債権者の合意が必要ですが、相続人のうち誰が承継するかを決めることはできます。

 

実務上、遺産分割協議書の記載のポイントは次の通りです。

・財産債務が具体的に特定できる事、特に不動産などの登記が必要となる事項

・被相続人の氏名、最後の本籍と住所、相続開始の年月日、分割協議した年月日の記載があること

・相続人全員の自筆の署名と実印が押してあること

遺産分割協議書は、専用の用紙も、縦書き、横書きなどの書式も決まっていません。

また、一部の財産についてだけ記載し、まだ分け方が決まっていない財産は、また別の機会に決めることもできます。

 

遺産分割の方法は現物分割、代償分割、換価分割の3つがあります

 

現物分割は、一番普通の分け方で、Aという財産は長男一郎が取得、Bという財産は二男二郎が取得、という具合に財産ごとに直接分けるやり方です(また共有として各相続人の持ち分割合を決める分け方もあります)。

 

代償分割は、Aという財産は長男一郎が取得し、代わりに長男は二男二郎に1千万円支払う、という具合に、長男が財産を独占取得する代わりに(代償として)次男にお金をあげる、というような分け方です。

 

換価分割は、現預金以外の相続財産の一部又は全部を売ってお金にしてから、そのお金を相続人で分けるという分け方です(相続人が一旦売るため、所得税の対象になります)。

 

遺産分割協議書は登記に必要

 

土地建物などの相続登記と、預貯金、株式、車などの相続による名義変更のためには、遺産分割協議書が必要となります。

 

遺産分割協議書は相続税の申告に必要

 

相続税の申告において、基本的に誰が取得するかの証拠書類として、遺言書や遺産分割協議書のコピーが必要です。特に、以下の優遇規定を受けるためには重要です。

 

①小規模宅地等の評価減(税金計算の基礎となる宅地の評価を50%から80%減額できる規定)

②配偶者の相続税額の軽減(配偶者の税金を安くできる規定)

③特定計画山林の評価減

④農地等の相続税の納税猶予、非上場株式等の相続税の納税猶予、山林の相続税の納税猶予、医療法人の持分の相続税の納税猶予の規定

⑤相続税の物納の規定

 

相続税の申告期限(相続開始があったことを知った日の翌日から10月以内)までに誰が取得するか決まっていない財産については上記の規定が受けられなくなり、相続税は不利になります(①~③については手続をふみ、申告期限から3年以内に決めれば、受けられる可能性はあります)。

 

一旦決めた遺産分割協議のやり直しは、特別な事情がない限り、相続人の間で財産の譲渡や贈与があったものとみなされ、所得税、贈与税の対象となりますので注意が必要です。

 

*10か月といっても、遺言書、相続人、財産債務の確認、遺産分割、申告、納税が完了するまでが10か月なので、何かひとつでもスムーズにいかないと、結構ハードですね。

 

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