葬式費用の債務控除の注意点(相続税の計算)

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相続税の課税のベースとなるのは、被相続人の相続開始の時点(死亡時)の被相続人の財産と債務の金額です。

しかしそのベースとなる金額には、例外として、被相続人が生きていた期間のものもあれば、相続開始後日数を経過してからのものもあります。

被相続人が亡くなった後に、相続人その他の人が行いますが、相続税の債務控除の対象となるものに、被相続人の葬式費用があります。

被相続人は、もちろん亡くなっているので、被相続人が自ら出費するわけではないので被相続人の民法上の債務ではありません。

しかし、被相続人が亡くなったからこそ行われるものであり、被相続人の死亡と密接に関連した出費という事がいえますので、相続税の計算において、課税のべ―スのマイナス要素として控除することが認められています。

 

[1]債務控除の対象となる葬式費用には次のようなものがあります

お通夜、仮葬式、本葬式、埋葬料、火葬料、納骨その他に要した費用

死体の捜索、死体もしくは遺骨の運搬に要した費用

葬式に際して施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるもの

 

[2]債務控除の対象とならない葬式費用には次のようなものがあります

香典返戻費用、墓碑及び墓地の買入費並びに墓地の借入料 法会に要する費用、医学上又は裁判上の特別の処置に要した費用

 

[3]葬式の際の戒名代、お布施、心付、お車代は債務控除できる

これらは、領収書がない場合でも支払先、人数、日付、内容などをメモしておけば、債務控除できます。

これはやはりレシートを発行してもらう、という事にそぐわない特別な場面ですから、領収書なしでは認めない、などといった厳しい規定とはなりません。

 

[4]葬式当日に行われる初七日法要費用は債務控除できない

 

初七日法要費用は債務控除できません。

私見になりますが、そもそも“初七日”という位なのだから、亡くなってから数日たって、遺族や関係者の気持ちが少し落ち着いてから行うのが本来であり、同日にやること自体が、初七日の法要とはいえないと思います。

しかし、遠方から出席する親類が再度集まるのが困難などの都合を考慮して、お葬式と同日に行うことは今では珍しくないことですね。

お葬式当日に行うのであれば、お葬式の一部として、債務控除できそうです。

今のところの指針として、初七日法要費用として金額がはっきりしていなければ、お葬式当日に行うのであれば債務控除できますが、初七日法要費用の金額が区分されていれば、お葬式当日に行われても、債務控除はできないこととされています。

[5]納骨費用は債務控除できる

納骨式は、通常、四十九日の法要が済んだころ行います。

四十九日法要費用は債務控除できませんが、納骨費用は債務控除できます。

納骨費用はお墓に遺骨を入れたときの心付けなどをいい、墓石に戒名を彫刻する費用は債務控除できません。

納骨は通常お葬式からだいぶ日数が経ってからのことが多く、お通夜、お葬式とはタイミングが違い、判断に迷いますが、やはり人の死亡と密接にかかわるというところで債務控除の対象となります。

位牌は、基本的な仏具であり、形も小さくシンプルなので債務控除出来そうですが、仏壇と同じように控除できません。

[6]香典返し費用は債務控除できない

お通夜、お葬式の際の会葬返戻品は債務控除できますが、後日あらためて行う香典返しの費用は債務控除できません。これは香典という収入を、相続財産又は遺族への贈与として課税しない事、とのバランスで考えれば、自然な考えですね。

 

*宗教、宗派、土地柄、家族の習慣のちがい、職業、財産状況により色々な実態があるので、画一的に葬式費用の債務控除の可否を断定することは、難しいものもあるかもしれません。

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