相続人が子2人だけであった場合、そのうち子Aが被相続人と同居しており、子Aとその妻が被相続人の食事、洗濯、そうじ、病院付き添い、買い物、役所の手続などを手伝っていたとします。
この場合法定相続分は1/2づつですが、子Aは妻と協力して被相続人の面倒を看ていたので、2/3ほどになるように遺産を分割したい、と子Bに主張。
一方、子Bは、子Aが学生時代に外国留学、スポ―ツ(乗馬)などで被相続人から多額の資金援助を受けていたこと、現在、被相続人の住居に同居しているため家賃がかからない事、などを理由に、法定相続分のとおり1/2づつの遺産分割を主張。
民法では、共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、その者の本来の相続分に一定の相続分を加算する、という寄与分(きよぶん)の制度というものがあります。
親子は互いに扶養する義務があるので、通常の療養看護は、特別の寄与とはいえません。
しかし、本来のところ外部の介護業者に頼み、財産を支出する(お金を払う)ところを、体の弱った被相続人を24時間体制で看護していたなどにより、家族間の通常の扶養義務を超え、財産の支出をおさえられた、と認められば寄与分となります。
また民法では、被相続人からの遺贈の他に、生前に受けた結婚の結納金、事業資金、マイホーム資金、自動車購入資金など特別な財産的利益を特別受益といい、各相続人の公平を考えるため、過去に受けたその特別受益も一旦、相続財産に足し戻して各相続人の相続分を計算するという制度があります。
・子Bと比べ、大きな格差があると認められる、大学以降の学資などは特別受益となります。
・同居のため家賃分が浮く、というのは通常特別受益とはなりません。
相続人間でどのような割合を基準とした分割であれ、円満に遺産分割協議が進めば問題ありません。
遺産分割協議が進まないとき、家庭裁判所での調停や審判の手続に進み、寄与分、特別受益分の詳細な内容、財産価値の検討に入ります。
*ちなみに子Aの妻は、遺言がない限り、残念ながら相続人ではないので、直接相続財産は受け取れません。
(2017年時点の記事のため、寄与分について現在の法令等と異なるところがありますので、ご理解、適用には十分ご注意のほど、お願い申し上げます。)