相続税の申告期限は、相続の開始があったこと(亡くなったこと)を知った日の翌日から10か月以内です。
10か月というとだいぶ長いです。最も気持ちの整理だけでもだいぶ時間が必要ですよね。
しかし、相続財産と債務について整理し、調べ始めるのに、のんびり構えていると大変なことになることがあります。
相続の放棄、限定承認についての手続(家庭裁判所)の期限が、相続の開始があったことを知った日の翌日から3か月以内なのです。
亡くなった方に多額の借金があった場合、この放棄などの手続をしないと、そっくりそのまま、相続人の借金となってしまいます。
[1]相続放棄
相続の放棄とは、相続人となる人が、相続の権利も義務も、放棄し、初めから相続人とならなかったものとすることです。
[2]限定承認
相続の限定承認は、相続人がプラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産(借金など)を引き継ぐとする規定です。
[3]相続の放棄をする場合
相続の放棄をする理由は以下のものなどがあります。
相続財産が、債務超過(財産より借金の方が多い)なので、相続は自分にとってマイナスでしかない。
生きていた間に財産の贈与を受けているので、相続については辞退したい。
経済的に十分うまくやっているので、相続については辞退したい。
法定相続人ではあるが、亡くなった人又は他の相続人と、何らかの理由で疎遠なので、また他の相続人とゴタゴタしたくないので、相続について辞退したい。
[4]相続の放棄のデメリット
相続の放棄をした人は、相続税法上、相続人とならないため、受け取った生命保険金の非課税や退職手当金の非課税の規定は適用できません。その他相続が続いた時の控除規定が受けられないなどがあります。
[5]相続の限定承認をする場合
相続の限定承認をする理由は以下のものがあります。
財産と債務がいくらあるかはっきりせず、債務超過となるのが心配。
特定の遺産(土地、建物など)は相続したいが、もし債務超過となる場合、超過分まで引き継ぎたくない。
[6]限定承認のデメリット
相続の限定承認をするデメリットには以下のようなものがあります。
相続人全員の合意が必要なので、法定相続人の内、ひとりでも反対する人がいるとできない。
限定承認後の手続(公告、催告、場合により財産の競売など)が煩雑。
税法上、遺産の全部について被相続人が時価で売ったものとみなして所得税がかかる。この時、居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除は受けられない。
[7]早い段階で調査を
相続する、しないは、原則3か月のうちに決めなければなりませんので、以下のことは、早い段階で調べておくのに越したことはありません。
被相続人の、銀行、組合、消費者金融、クレジット会社、リース会社、友人知人その他からの借入金があるかどうか、あればいくら位か。
被相続人が何らかの連帯保証人になっていたら、相続人はその連帯保証も、相続放棄しなければ、引き継ぐことになりますので、書類もなく、わかりにくい場合がありますが、友人関係、仕事の関係から連帯保証人になっている様子があるかどうか。
[8]まとめ
自分が貸したお金は、返してもらいたいのと一緒で、借金したら、返すのが当然。亡くなった方の借金も本来相続人が引き続き返済するのが普通です。
しかし、相続人が借金の存在もわからないまま、知らない間に莫大な借金を背負ってしまうのは、やはりむごい話ですよね。