改製原戸籍ってなんだ(相続税申告の用意書類)

相続税申告の用意書類の中に改製原戸籍というものがある場合があります。まず改製原戸籍が読むづらいですよね。

改製原戸籍は、かいせいげんこせきと読みますが、かいせいはらこせきと読む方もいます。

はら戸籍、とはじめて聞く人は普通の戸籍と違い、何か特別な次元の戸籍があるのではないか、と不安をお覚える方も多いと思います。

本来、げんこせきと読むものですが、げんこせきと人に伝えると、現在の現の意味のイメージが強いので、現在の戸籍のこと、と受け取られ易いと思います。

改製原戸籍は、現在の戸籍でなく、“改める前の戸籍”ですので、現在のげんとは区別するために、発音上、原を“はら”と明らかに違った発音とすることで、現在の戸籍とはっきり区別しようとする現場(役所や士業など)の慣習として定着したものです。

200をにひゃくではなく、ふたひゃくと発音して、聞き間違いを防ごうとするのと似ていますね。

 

戸籍の記載事項や様式の約束事を変えることを、改製といい、戦後2回、全面的に改製がありました。

現在戸籍(平成6年基準)→改製原戸籍(昭和32年基準)→改製原戸籍という制度のさかのぼり方ですね。

1回目は、昭和32年法務省令(昭和23年施行戸籍法より)からです

それまでの戸籍を昭和改製原戸籍(昭和の改製前の戸籍)とも呼び、現在の戸籍と区別します。

2回目は、平成6年法務省令からです。

それまでの戸籍を平成改製原戸籍(平成の改製前の戸籍)とも呼び、現在の戸籍と区別します。

 

1回目は、以前の家基本単位の戸籍から、戦後の戸籍法改正により夫婦が基本となる戸籍への改製です。

第二次大戦後、新憲法制定、民法改正により、俗に長男が家督相続するとか、本家、分家というような概念が制度上、なくなりました。

それまで戸籍には、父母、子のほか、祖父母、叔父叔母、兄弟姉妹をも含む一家として、戸主を中心として記載が有りましたが、これを、一夫婦とこれと姓を同じくする子のみを記載することに変更になりました。

 

2回目は、手書き、縦書きが基本様式だった戸籍から、コンピュータ管理、横書きとなる改製です。

抜本的に電子管理となり、コンピュータにより印字し、A4サイズ横書きとなったので、ガラッと印象が変わりました。

以前は縦書きで、時系列ごとに小さい筆で描いた筆跡と、記載した人の印影、いないひとの氏名欄に大きくバツが付いたり、手書きから印字になったりと、家族の古い時代からの歴史を感じさせられるような味わいがありましたが、この改製により、残念ながらこのような紙ベースならではの味わいはなくなりました。

そのかわり、すっきり、読みやすいパソコン印字に統一となりました。住民票とあまり紙面のイメージは変わりません。

ただし、戸籍の管理は市町村単位で、平成6年法務省令のあと、いつから改製したかは市町村によって異なります。

 

*以前、明治生まれの方の生まれた当時の戸籍を、相続人の代理をさせていただき、地方の役所に行ったとき、ずいぶん長い時間、待たされたことがありました。とても歴史的な筆跡の戸籍で、さすがに役所内部でも、相当なベテランの方でないと内容が読みとれなかったためのようでした。